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【第31回】映画監督 船曳真珠さん

「仕事というより『映画を作りたい』気持ちが強かった」

第31回の「キレイWOMAN」は映画監督の船曳真珠さんです。中学校のころに映画監督になりたいと夢を抱いた船曳監督。今年10月に公開する映画「携帯彼氏」で本格始動された若手の女性監督は、入学した東京大学の映画サークルで自主映画を撮り始め、卒業後は東京藝大大学院映画学科監督領域でさらに映画について学んだそう。近年、女性の映画監督が増える中で、映画業界で働くこと、そして初の劇場長編作に挑み、完成するまでのストーリーを伺いました。

page 1:映画監督になるまで page 2:映画「携帯彼氏」撮影秘話

映画監督 船曳真珠さん

「撮り始めた頃は気楽にやっていていましたよ」と懐かしそうに話す神立さん

中学生のころに「映画を作りたい」と思われたということですが、そのころから実際に映画監督の真似ごとのようなことはされていたのでしょうか。

家庭用の8ミリビデオカメラで友達や家族、身のまわりのものを撮ったりしていました。でも、お話になっているようなものは撮ったことがなかったんです。
しっかりと撮り始めたのは大学に入ったときからなので、18歳ぐらいからでしょうか。自分で脚本を書いて、撮っていました。あとは自主映画などを撮って、レイトショーで公開していただいたりもしました。劇場用長編映画は、今回の「携帯彼氏」が初めてです。

映画を撮るだけでも大変な作業だと思うのですが、脚本もご自身で…となると、時間もかかるし大変ではなかったですか?

そうですね。でも、撮り始めた頃は気楽にやっていましたよ。脚本と言ってもメモ書きのような感じのものを使っていましたし。出演もスタッフも友達でしたから、メモ書きを見せつつ、「こういうふうにしよう」などと相談しながら現場で作っていくことが多かったです。

ひと言で「映画を撮る」と言っても、すぐに撮れるようなものではないと思うんです。どのように撮ればいいのかなどは、どちらで学ばれたんでしょうか。

大学入学後、すぐに映画サークルに入りました。メンバー全員が自主的に映画を撮っている人ばかりなので、最初はスタッフとして参加して、そこで「これぐらい用意しておけば、きちんと撮って、編集して、作品になるんだな」という流れを学びました。機材はサークルで共同で買って持っていたので、それを借りて、見よう見まねで撮影を始めたんです。

最初のころ、「これは大変だった」ということはありますか?

撮る前は、自分が思い描いていたものが“そのまま”映画になると思っていたんです。でも、実際に撮ってみたら、全くそんな風にはならない(笑)。正直、初めは少し幻滅しました。でも、だんだんと「逆にそれが面白いんだな」と思えてきたんです。自分が考えていたものとは違う、“意外なもの”が出来上がっていくほうが面白い、ということが分かってきたんです。

映画監督を仕事にしようと思ったきっかけは?

最初は、自分で映画を作りたくて自主映画を撮っていたんです。仕事というより、「映画を作りたい」という気持ちが強かった。「仕事に…」とは考えていなかったですね。でも、自主映画を撮っていく中で、「これを一生やれたらいいな」と思うようになっていったんです。

自主映画と、今回のように劇場で見てもらう映画を撮るとき。スケールの大きさでプレッシャーも違ってくると思うんですが、いかがでしたか?

徐々に規模が大きくなって、責任も生じるようになってきましたね。藝大の大学院に通っているときに、劇場で流せるということで映画「夕映え少女」を撮らせていただいたんです。プロの役者さん、スタッフと一緒にやらせていただいたんですが、かなりプレッシャーでしたね。当時の私は学生でしたし、もちろん初めての経験で、「こんなふうに作らさせてもらっていいのかな」と不安になりながら撮りました。役者さんの方々や、スタッフの方々に支えてもらって、乗り切れたという感じでした。

映画監督 船曳真珠さん

「映画についての文章を書くのも好きで、前に映画芸術に寄稿させていただいていたりもしたことがあるんですよ」と言う船曳さん

その中で学んだことはありますか?

コミュニケーションは大事、ということでしょうか。
1人の人間が「これやりたい」「あれやりたい」と言い続けることで、すごい作品ができることもあると思うんです。でも、その作品に関わってくれているいろいろな人からアドバイスや考えを聞きつつ、1つのものを作り上げていく。そういうことが大切なんだと感じましたね。

最近、女性監督が増えましたが、まだまだ映画監督業界で少数派だと思います。仕事として大変な職業ではないですか?

私も、この業界は男性社会で大変だと思っていたんです。だから、初めはスタッフの方からも、女だし若いしということで拒絶されてしまうのかなって思っていたんですが、全然そんなことはなかったですね。「そういうふうになってしまうかも」と不安を感じていたことをスタッフの方に話してみたんですが、「最近は全然そんなことないよ」という話でした。女性のスタッフもどんどん増えて多くなっているそうで、そういったことは気にしないということでした。ここ数年、十年ぐらいですごく変わったんだと思います。

仕事上で女性としてプラスな点、マイナスな点は?

女性のほうが基本的にコミュニケーションがわりと円滑に取れるという部分でプラスではないでしょうか。私自身どうかは分からないですけど、今まで一緒に仕事をやってきた女性スタッフは、そういう感じでいいなと思いますね。
マイナス面は特にないです。

女性の映画監督仲間で集まることもあるのでしょうか?

私が在籍していた藝大(監督コース)の同期半分ぐらいが女性だったんですけど、彼女たちとは本当によく話します。ほかにも、女性ばかりが映画を撮る企画「桃祭り」に参加しているんですが、そこで女性監督の方や、同世代で映画に携わっている方と話すなど、集まる機会は多いですね。

映画を見るときは、どういう視点で見られているんですか?

私にとってストーリーが重要なので、「お話を楽しませてくれる映画か」ということをチェックします。アメリカ映画のエンターテインメントものが好きなので、作品から受ける“力”に感心しながら見ています。そのほかにも、「こんな映画が作れるんだ」という驚きを与えてくれる作品も好きですね。

「3時10分、決断のとき」(c) 2007 Yuma, Inc. All Rights Reserved.

映画「3時10分、決断のとき」(c) 2007 Yuma, Inc. All Rights Reserved.

(夏目漱石の怪談「夢十夜」を原作にしたインディーズ映画「夢十夜・海賊版」の一篇「第五夜」や「携帯彼氏」の監督を務めているので)ホラー系が好きなんだと思っていました

あ、そうですよね(笑)。ホラーは好きですけど、内容にもよります。今回の「携帯彼氏」の話をいただいてから、30本ほどホラー映画を見たんですけど、これまで感じなかった“楽しさ”を発見できました(笑)。「こういうふうに工夫している」「私なら…」という発見がすごく勉強になりました。

最近見てよかったなと思われた作品は?

「3時10分、決断のとき」ですね。ジェームズ・マンゴールド監督の前の作品「ウォーク・ザ・ライン/君につづく道」がすごく好きだったので、海外で公開になったと聞いたときにすごく見たかったんです。なんで日本で公開しないんだろうと残念に思っていたんですが、ようやく公開されたんですよね。ラッセル・クロウとクリスチャン・ベールの友情の話なんですが、男の生き様などが最高でした。今のところ今年一番の作品です。

これまで見た中で、一番好きな作品は?

難しいですね…、何でしょう。あまりにたくさんありすぎて。小学生のときに黒澤明リバイバルが劇場でやっていて、家族と一緒に「七人の侍」を見に行ったんです。すごく感動しました。白黒だし、長いし、最初のほうは日本語が聞き取れなくて、何を言ってるかも分からなかった。物語の最初のほうの農民が一揆するとか、なんだか分からなかったんです。でも、主人公たちが強い侍を選んで加勢させる場面で、候補の侍が戸から入ってくるとき襲いかかるように刀を振り下ろしてみるんですね。それに相手がどういう反応をするかで選ぶんですけど、そのシーンがすごく面白かった(笑)。とても印象に残っていますね。

 

page 2:映画「携帯彼氏」撮影秘話をみる >>


映画監督 船曳真珠さん <イメージ画像>

船曳真珠(ふなびき・しんじゅ)

1982年、東京都出身。2000年、東京大学文学部美学芸術学科入学と同時に自主制作で映画を撮り始める。初監督作品「山間無宿」が01年・調布映画祭ショートフィルムコンペティションでグランプリを受賞。学業の傍ら、03年から映画美学校第7期フィクションコース初等科に在籍し、インディーズ映画などを監督する。06年に東京藝術大学大学院映像研究科入学(監督領域二期生)。北野武、黒沢清らの教えを受ける。東京藝大とジェネオン エンタテインメントが共同製作した『夕映え少女』の一篇「夕映え少女」を監督し、レイトショーで公開される。雑誌「映画芸術」にも寄稿するなど執筆活動も行っている。

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